「ラルクのhydeは歌下手」って言う人に、一言物申したい

HYDE


「HYDEってバンドのボーカル超上手い」
「HYDEのボーカル、上手いけどラルク意識しすぎじゃね??」

↑これ、何だかわかります??


これは今から3年くらい前だろうか。とある大型フェスでHYDEがソロ出演した際に、ステージを見た観客のTweetである。上記を呟いたのは、おそらくラルクにもhydeにもそんなに興味がない、たまたま会場にいてステージを通りがかった観客だろう。

「HYDEはバンド名じゃなくてhydeのソロ活動の名義だよ!」とか、
「意識してるというか、ラルクのボーカルがhyde本人だから!」とか、


そういうツッコミ的な意味合いで、当時少しだけ話題になった。
そんなことを思い出した。


こんにちは。考える犬くんです。

さて今日の話題はL’Arc〜en〜Cielのスーパーボーカリスト。
そう、我らがhyde様について。(以下敬称略。)

上記のTwitterのエピソードから分かるように、
「hydeのボーカルスキルは凄い」というのが、今日では世間一般の認識であるように思える。


しかしである。今となっては信じられないことだが、

「ラルクのhydeって下手だよね」


などという声が盛んに聞かれた時代が、10〜15年?くらい前にあった。
…と思っていたら、そういった声は少なからず今もまだあるようだ。

少し調べたらこんな様相。結構ショック…













そう、以前ミスチル桜井さんで同様の話題を扱ったが、
hydeもまた、その歌唱力が議論の対象になりやすいボーカリストである。

(↓ミスチル桜井さんについては、以下記事でまとめたので、どうぞ!)


さて、ここで個人の見解をはっきり言っておきたい。
間違い無くhydeは、日本トップレベルのボーカリストだ。
世界レベルといって良い。
(※あくまで個人の見解です。)


実際彼は、L’Arc〜en〜CielVUMPS、そしてソロと、世界中でライブを行なっているが、たとえ現地のミュージシャンであっても、彼の歌を聞いて、歌唱力を不満を感じる者はいないだろう。

もちろん、彼より技術的に優れたボーカリストもたくさんいるだろうが、
だからといって

「hydeよりフレディマーキュリーの方が上手い!」

なんてことを言われても、この話は終わってしまう。


そういった穿った見方でなく、あくまで中立的な視点で。
一般的に彼のスキルは高いのか?そうではないのか?
今回は詳しく見ていきたい。




さて、まず彼の歌唱法で目をつくのは、やはりその特徴的な歌い回しだ。

特に初期に色濃い、ねっとりとした官能的とも言えるその歌い回しは、ラルクがデビューした直後の90年代ヴィジュアル系黎明期とも言えるシーンに、抜群にマッチしていた。

(彼らはヴィジュアル系という括りを一時期嫌がっていたと言うけれど、ここでは割愛)
(実際、最近はヴィジュアル系の先輩後輩ともリスペクトをもって接しているし)

この粘っこい歌い回しは、本人も公言しているとおり、JAPANのデヴィッド・シルヴィアンからの影響を色濃く感じる。唸るような低音域とか。

ただし、hydeにはサビで突き抜ける高音がある。
これは正直、デヴィッド・シルヴィアンには無い武器だ。

これは、Aメロ→Bメロと勢いを増し、サビで一気に突き抜けるというJポップ的な構成と非常に相性が良い。それを示すように、ラルクの曲はサビで一気にロングハイトーンが突き抜けるような曲が多い。

デビュー当時はアングラの象徴とも言えるヴィジュアル系シーンの出生で、ラルクがここまで唯一無二のモンスターバンドとなったのは、退廃的な世界観と、ポップスとのバランスが巧すぎたからである。これは間違いない。リーダーのtetsuyaを筆頭に、彼らほどポップスにリスペクトをもって、真摯に取り組んだバンドを、僕は知らない。

少し話が逸れた。



さて、hydeが歌が下手と誤解される大きな要因の一つが、
この特徴的な歌い回しではないだろうか。

あなたも、一度くらい見たことが無いだろうか。
カラオケでhydeを意識するあまり、残念なことになっている男性を。

つまりこの節回しは、

「音が当たってるのか外れているのかわからん!」
「声が出ていないのを妙な歌い回しで誤魔化しているのではないか?」

といった疑問の声を生みやすいのである。

もう一歩踏み込んで、ちょっと残酷なことを言うと、あの歌唱法は、一つ間違えれば音が外れて聞こえる激ムズ歌唱というだけに止まらず、ルックスが伴っていないとただのナルシストに見せてしまう、諸刃の剣である。


ドラクエで言うとはかいのつるぎ。初心者にはおすすめできない。

はかいのつるぎ。4分の1の確率で行動不能に。


というか、正直初期はhyde自身もこの歌唱法に手こずっていた感があった。

あの特徴的な歌い回しと自然な発声を両立させるのは、どう考えても難しい。時には歌唱に引っ張られて、おかしな発声になってしまうこともあるだろう。

ボーカリストの方には共感してもらえると思うが、発声というのは、一度変なところに入ってしまうと、それ以降喉が全くダメになってしまうことも、往々にしてある。

さらにもう一つ付け加えると、ラルクの曲自体、邦楽では屈指の難しさであることにも触れておきたい。

地を這うような低音からはじまり、サビでミックスボイスを上り詰め、それに飽き足らず超ハイトーンの裏声へぶっちぎる。

そんな曲をシングルとして出すのは、毎回ライブにセトリとして検討することを意味する。


常に万全のコンディションで臨めるとは限らない。時には声が出ないステージもあるだろう。それは今後長期的に活動する上で、どれほどのリスクだろうか。


そこには、L’Arc〜en〜Cielのフロントマンとして世界観を表現し続けるというhydeの覚悟、そして「でも彼なら歌えるでしょ」とでも言うような、tetsuyaやkenら作曲陣の信頼が見て取れる。

あれは2000年初期の頃だったろうか。

「ライブ行ったけど、hydeは最初は上手かったけど、その後散々だったよ」


という噂を聞いたことがある。
自身が歌うようになった今なら少し理解できる。


hydeは、L’Arc〜en〜Cielの世界観を表現するために、毎ステージ超高難易度の勝負に挑んでいたのである。
そして、時には癖の強すぎる歌唱に、また時にはスキルを100%発揮しないと歌いこなせないような楽曲に、思うようにパフォーマンスのできなかったステージもあっただろう。その胸中は、想像に難くない。



ただ、2005年以降くらいからだろうか。彼の声はかなりの安定感を誇っている。

幾度も勝負を経て、癖の強い魔物をねじ伏せはじめたとでも言うべきか。

時にイメージと現実の間で苦しんでいた彼が、自由を得て、大空を飛び回るようになった。
かつて彼が思い描いた、世界観と発声を両立させることのできる最強のボーカリストに着々と近づいている。そんな印象を得た。


そう、近年の彼のボーカルを一言で表現するなら、「自由」だろう。


他のボーカリストと共演するようなフェスやテレビ番組で彼を見ると、対比でその現実離れした力量がよく分かる。

たとえば以下の動画だ。




GLAYのTERUも超絶なボーカリストに違い無いのだが、この動画ではhydeの方が自由に伸びやかに歌っているように感じないだろうか。どちらかというとTERUの方が地に足のついた、スキルフルな歌唱をしている。

例えるなら、TERUが力強く地をかける獅子で、対するhydeは、悠々と空を飛ぶ鳥のようだ。

地面の呪縛なんか我関せずで、圧倒的なスキルとイメージの両翼で、縦横無尽に遊んでみせる。HONEYの上ハモなどという超高音域を、こんなに太くだせるボーカリストが一体どのくらいいるのだろう?

hydeのボーカルが下手?



感じ方は人それぞれだけど、おそらくそういう人は、最近の彼のライブを聞いてないんじゃないかな。


機会があったら、ぜひ聞いてみて欲しい。


近年の彼の歌声を聞けば、そのパワフルさと、どこまでも自由に繋がってゆくミックスボイスの巧みさに度肝を抜かれるだろう。


論じるのはそれからでも遅くないはずだ。

余談だが、最近だと英語の発音に何かの間違いレベルの上達が見られたり、X JAPANのYOSHIKIやLUNA SEAのSUGIZO、そしてMIYAVIとJロックのアベンジャーズみたいなバンドを結成したり、その進化と躍進はマジで止まることを知らない。

というか、こういったレジェンドたちを背負ってフロントを努められること、その立ち位置を誰ひとり疑わないことこそが、彼がアイコン的にも実力的にもトップボーカリストであることの証明に他ならない。

はっきり言います。彼より歌の上手い日本人なんて、もう数えるほどしかいません。
というかもう元ネタのディビッド・シルヴィアンより上手いです彼は。


そして何より重要なのは、上手いとか技術が高いとか言うごちゃごちゃした理屈を飛び越えて、彼のボーカルは死ぬほどカッコいい。これほどまでに自由で、最高にクールで、数多くの人々を虜にしているボーカリストを前に、もはや技術が低いとか高いとかの議論は意味があるのか??とすら感じてしまう。


2021年披露のflower。なんて優しい歌い方…


L’Arc〜en〜Cielのボーカリスト、hyde。

彼の声は、数え切れないほどの勝負を経て彼が勝ち取った、まさに「自由への招待」である。

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