僕らの桜井さん
桜井和寿。
いわずと知れたMr.Childrenのフロントマンであり、ボーカリスト。
演奏するほぼ全ての楽曲の作詞作曲を手掛ける。
そもそもミスチル自体が1992年のデビュー以来、
約30年に渡り音楽界のトップに君臨し続けているモンスターバンド。
30年て。やばすぎ。
桜井さんは、そのMr.Childrenが誇る、天才ソングライターであることに疑いの余地はないでしょう。
しかし、どういうわけか、ことボーカルに関しては
「下手」と評されているのをしばしば見かけるのです。
これは…?
もちろん、ある程度の知名度が無いと議論の対象にすらならないし、
言われているのは主にネット上だったりするわけだけど…
始めにmasuの意見を明確にしておくと、
「桜井和寿は、化物レベルの名ボーカリスト」だと思ってます。
なので、巷で「桜井さん下手だよね」と聞く度に、
なんともモヤモヤとした違和感を覚えていたのです。
今回はその理由を明らかにすべく、原因を徹底的に考察してみたい。
そういう記事です。
何を言われているの?
さて、まずは情報収集から。
検索して、その手の評判を片っ端から読んでみましょう。
主な内容を書き出してみたのが、こちら。↓
・苦しそうに聞こえる
・声がキンキンして聞きづらい
・高音が出なくなった
・安定感が無い
なるほど、なるほど…
と、ここでふと思った。
じゃあ誰が上手いんだろう?と。
「どんな男性ボーカリストが上手いと言われているのか?」
こちらも検索してみた。
- 玉置浩二
- B’z稲葉さん
- 山下達郎
- スピッツ マサムネさん
- デーモン閣下
- 秦基博
- 髭男 藤原さん
なるほど。
確かに化物クラスに上手い人たちばかりである。
幅広い個性の中にも、共通点はありそうだ。
「上手い」よりもっと具体的に評価している言葉を抜粋すると、
・ピッチ(音程)が安定している
・安定して高音が出る(余裕を感じさせる)
・音程の動きが滑らかである
・そもそも声が良い
こんな感じであった。
「上手い」の定義は、人によって様々
さて、ここで一つ気づいたことがある。
これらの記事の多くで、「歌が上手い」の定義を定めていないことである。
ある人は表現力を重視するかもしれないし、
またある人はピッチを絶対視するかもしれない。
前者のリスナーが、例えば
美空ひばりの歌手としての表現力の凄さを論じる一方で、
極端な話、ピッチを絶対視するリスナーからすると
究極のボーカリストは初音ミクかもしれない。
これでは議論をするのに、両者が交わることはない。
つまりこれらの評価は、発言者の
「あの人は上手い(と思う)」
「あの人は下手だ(と思う)」
という意見に過ぎないのだ。
そう、「上手い」の定義は、人によって様々なのである。
完。
…とするのはあんまりなので、もう少し話を続けます。
多くの人が「上手いと思いやすい声」とは?
ここまでのところを整理すると、
「上手い」の定義は、人によって様々であり、
多くの人が「上手い」と認識するのが上記のボーカリスト。
逆に桜井さんは、評価が分かれることが多いということだ。
ここで重要なのは、
「一般の人が上手と認識しやすい歌声とは?」
ということである。
それは上記の「上手いボーカリスト」を
評価するコメントが手掛かりとなるだろう。
・ピッチ(音程)が安定している
・安定して高音が出る(余裕を感じさせる)
・音程の動きが滑らかである
(表現力がある)
(声が良い)
これらの視点からいくつか抜粋し、桜井さんのボーカルを見てみよう。
・ピッチ(音程)が安定している
これは余裕で合格点だと思う。
レコーディングシーンなんか見ていると一目瞭然だ。
ボーカリストとしてのピッチ感は、完全に標準以上に達している。
(この時の彼の音程が悪いとすると、更に悪いボーカルはゴロゴロいる。)
ただしライブだとシャウトを織り交ぜたり、しゃくりを多用した
歌いまわしをすることがあり、若干ピッチを外すことがある。
しかし、おそらくこの時は桜井さん自身も
そもそも音程を当てようと思っていない。
そこを切り取って「ピッチが悪い」というのは酷だ。
・安定して高音が出る(余裕を感じさせる)
桜井さんは、顔を歪めて発するスリリングな高音が持ち味だ。
一見すると喉を締め付けているような表情にも見えるし、
見ようによっては苦しそうに聞こえるかもしれない。
なるほど、これがこの議論におけるポイントかもしれない。
だが、ちょっと待ってほしい。
歌っている張本人の彼は、実際苦しんでいるのか?
これははっきり断言できるが、Noである。
理由は明白で、本当に苦しんで歌っているのであれば、
彼の喉はとうの昔にぶっ壊れているからである。
人間の声帯というのは、耐久性という点で個人差はそこまでない。
どんなボーカリストも、無茶な歌い方をすれば声が嗄れる。
まず前提として、3時間以上のライブを完走できる時点で
身体を活用した発声なくして不可能だ。
もう一つ言うと、実際カラオケなんかで喉を締めて
彼のモノマネをしてみてほしい。
全然うまくいかないはずだ。
逆に彼のモノマネが上手い人(Mr.シャチホコさんとか)を見てもらうと、
案外すんなりと高音を出しているのがわかるだろう。
これがどういうことかというと、
彼の発声はきちんと筋肉で支えているという証拠に他ならない。
歌っているときの姿勢を見てみるとさらに一目瞭然で、
完全に歌が上手い人の体の使い方をしているのがわかる。
(画像)
海外の歌が上手い人なんかは、皆この姿勢なんだよなぁ。
逆にマサムネさんみたいに、肩をだらんとして
表情を変えずに歌って上手いボーカリストの方が珍しかったりする。
※余談だが、口の開け方、声の指向性(眉間から前へ)、
マイクを使うときの姿勢等、全体的にBz稲葉さんにそっくりだと思っている。
つまり、
「彼は表現方法としてスリリングな高音を出しているのであって、
実際に喉を痛めつけて声を出しているわけではない」
というのが筆者の考えである。
・声が良い
なるほど、声の良さというのも良いボーカリストには重要だ。
もちろん、どれを良い声と感じるかは、人によって様々である。
しかし、「多くの人が良い声と認識しやすい声」
というのは重要な視点であり、
「良い声を出す」というのは一つの技術ともいえる。
元来歌手というと、エルヴィスプレスリーやフナンク・シナトラみたいに
太く艶のある声で朗々と歌い上げるスタイルの歌手が多かった。
日本でも、歌謡曲が人気を博した1970年代には、
加山雄三や布施明といった伸びのある歌声を持つ歌手が人気だった。
対して桜井さんは、高音の響きがかなり強い。
太いか細いかで言うと細い。そして鋭い。
子どもの駄々をこねる声と似た周波だという分析を
どこかで見たことがある。
伸びのある低音と、鋭い高音。
どちらが耳に聞きやすい声かというと、前者かもしれない。
しかし、彼の声は我々に「刺さる」。
何かの番組で彼の声を「イノセントボイス」と評していた。
なるほど、上手いこと言うなぁと思った記憶がある。
多くの歌手のような深く響く声ではない彼の声は、
聞く者を鋭く、貫く。
でもそれを上手いか下手かとらえるのは、
やはり受け手サイドの問題である。
ボーカリスト「桜井和寿」の関心はどこに
総評。
ここまで考察して、感じたことがある。
それは、彼は世間一般の「上手い」とされる指標にそこまで興味が無いのでは?
ということである。
もちろん、彼自身「上手くなりたい」と思っているのは間違いない。
最近「ボイトレをきちんとするようにしている」と話していたし、
少し前には「下手になったと言われると、腹が立つ」という趣旨の発言をしていた。
しかし実際の歌唱を見ると…
もちろん音程は守っているが、そこまで固執しない。
いや、もっと正確に言うと、音程は重要視しているが、
それ以上に優先するものがあると考えている。
それはそれだけ多様な表現にアンテナを張っているということであり、
ボーカリストとしての引き出しの多さなんだと思う。
そのボーカリストとしての引き出しの多さ故に、
彼の「歌の上手さ」の物差しは、一般人である我々とは
異次元レベルに多用な指標があるのだろう。
つまり彼の目指す「良いボーカル」は、
世間の思う「上手いボーカル」といささか乖離している。
それが「桜井和寿=歌が下手」という一意見を生みやすくなる。
これが結論である。
桜井さんの目指す「ボーカル像」とは…?
ここからの話は、あくまで推測に過ぎないが…
筆者が思うに、彼の目指すボーカル像。
彼のもっとも関心があること。
それはおそらく、いかにリスナーに「刺さる」か、ということである。
「ミスチルの音楽は、『刺さる』か?」
この問いには、答えるまでもないだろう。
数えきれないほどの人が彼らの音楽を日常的に聞き、
そしてライブを聞くために訪れる。
日本のミュージックシーンに彼らが打ち立てた数々の記録が
そしてこれまで彼らの歩んできた軌跡が
その全てを証明している。
そして、彼らの音楽はこれから先も
きっと多くの人を貫くのは間違いない。
さて、ここまで読んで、賢明な皆様はすでにお気づきかと思うが、
筆者は桜井さんもミスチルも、そのすべてが大大大好きである。
そしてこの記事は、
プロの歌手を下手と論ずるのも自由だけど、それより好きな音楽を聞こうぜ!
という趣旨である。
桜井さんの声が苦手な方は、無理に聞かず、
自分が本当に素敵だと思う歌手を聴きまくるのが、精神的にも良いでしょう。
逆に桜井さんの声が大好きというあなたは、気が合いますね。僕もなんすよ!
お酒片手に、一晩中masuとミスチルを語り合いましょう。
ちなみにmasuにとって至極の1枚は、「IT’S A WONDERFUL WORLD」。
one two three→渇いたkiss→youthful days の一連の流れが死ぬほど好き。
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